2015年12月2日水曜日

観光地の夜



台北から戻るやいなやガイドブック制作に全力で突入。机から離れない、ほぼ引きこもり状態となって家や仕事場まわりでのブログネタも底を尽く。しかたなしに、台北の回顧ネタで今週は乗りきります(苦笑)。

趣味に偏った一連の投稿をみて、お前は仕事をしているのか?と疑念が沸いた人は多かろうと想像します。あれもこれも、あくまで休憩時に愉しんだことで、現地での活動の数%ほどのひとときを綴ってきました。実際には、90数%の活動は仕事に充てていたわけです、当然ですが。仕事とは、台北での現地ガイド付き団体ツアーに役立つ内容の冊子をつくるための取材。毎日、最優先に向かうのは、個人的には関心のない、いわゆる観光名所。私的な旅ではまず足を向けない場所を訪ね、情報を集め、淡々と写真を撮ります。





台北近郊の九 (きゅうふん)という場所もそのひとつ。急傾斜の石段の道脇に、チープで悪趣味な店が並びます。うへぇ~と辟易し、嘆きながら、黙々と名所的なショットを撮り続けます。日本人観光客に人気のスポットですが、どこをどう切りとっても嫌なものが映りこんでしまう。それでも、抑えるべきビジュアルはとらえ、さっさと送迎車のところへ戻ろうと、雑踏から離れたとき、路地をさまよう犬が目に入りました。




台北では飼い犬もリードをしないで散歩していることが多く、自由奔放にうろつくその犬も、果たして野犬なのかどうかわかりません。狂犬病に警戒しながらも、どこかうちの犬に似たたたずまいに惹かれ、導かれるまま地元の人が抜け道に使うような裏路地へと入っていきました。そこにはメインストリートの喧騒が嘘のような、夜の静寂が支配していて、たとえば日没後の江の島や鎌倉・小町通りのような、ローカルな空気に包まれ、ざわついていた心が鎮まっていったのでした。




もともと、金鉱で繁栄を極め、台湾で最初に映画館が生まれた街。かつての繁栄は夢のあとだけど、観光で活況を取り戻し、静かな一帯にはよどみのない風情とぬくもりがある。華を経験した街には必ず、往時の空気をどこかに潜ませているもの。悠然たる空気の流れがある。その気にふと触れた気がしました。今日もいい日だったと地域の住民がくつろいで過ごす。そのおだやかな生活の気配に触れなければ、 への印象、記憶を悪いまま心に閉じこめていたかもしれない。台北を再訪するときには、 に泊まって、早朝や夜の情景をしっかりと観てみたいな。謝謝、 のワンコ!

LEICA M-E , SUMMILUX50mmASPH.