2015年12月20日日曜日

師走の幸運


先月に続き、やまとプロムナード古民具骨董市へ。友人のTさんに早朝、拾っていただき同行。さすがに師走の朝は寒いけれど、よいものに出合いたいと高まる情念を、その寒さが適度に冷ましてくれる。イランを旅すると言っていた、良い眼を持つ青年はお休み。落胆しながら会場をぐるぐるまわると、素朴な手仕事の物がちらほらと眼に入ってきました。初訪問のときは、店主の美意識が貫徹されたブースだけに心が囚われていたけれど、そこまで完璧でない、むしろ扱うものへの知識が浅い、あるいは皆無な店主がバラバラと集めてきた物の山にも宝物が潜んでいることを知る。値引き交渉でのNGな言葉も自分なりに理解できて、とても学びの多い朝となりました。以前から強い関心を寄せていたイランの丸胴ガラス瓶にも遭遇。瓶の一部が虹色に輝く銀化現象を起こしていたので、かなり古いと直感しましたが、18〜19世紀のもののようです。友人Tさんが所持する雑誌「民藝344号」から紐解いたところ氷で薄めて飲む濃い果汁シャルバット」を売るために使い捨ての瓶としてつくられていたとか。丈夫なため、のちに水筒としても用いられたもの。イラン産のみではなく、イランの旅人が行く先々で吹いて制作していたそうです。気泡が入る、吹きガラスの風情もいいですが、旅にまつわる道具だったというストーリーにも惹かれます。こうして購入後も物の背景を調べると、買い物はより楽しくなりますね。



一度、いいものに出合えると、幸運は不思議と連鎖するようです。サッサッと描いたタッチに温かみがにじむタイルが安売り品をまとめた箱に混入。スペインのものと思って買ったのですが、明るい太陽の国とは異質の、淡い色合いに違和感を覚えました。そこで西洋工藝の名店「グランピエ」のHPを検索すると、ルーマニアのタイルに似た雰囲気のものが。工藝品への興味から、ふとルーマニアを旅してみたくなりました。物が誘う旅。それもまた良いもの。1月の再訪が待ち遠しい。Tさんに深謝。

LEICA M-E , MACRO-ELMAR90mm