2016年2月20日土曜日

COCHAEのグレート・ワーク



京都に暮らし、戦前に折り紙細工の本を数冊出版したという謎多き人物、中島種二さん。紙を折ってから切れ目を入れ、さらに折ることで折紙では不可能なユニークかつ大胆なかたちをさまざまに生み出した方のようです。中島さんの創造性をリスペクトし、考案した細工を誰もができるようにと制作工程の図案とポップなテイストを加えた本をデザインユニットCOCHAEの軸原さんがつくられました。先月は京都の書店「誠光社」にて出版を記念しての展示も開催。先日、本を手に入れ、ぼくもヲリガミ細工を愉しんでみました。この本の制作中、軸原さんとは新宿の純喫茶で打ち合わせしていたのですが、そのあと、スタジオでの物撮り用に、背景の多様な色紙など材料を買い集める姿がとても印象に残っています。書籍のアートディレクションにおいて、今日のデザイナーで撮影まで立会い、指示できる人はかなり少ないと思います。軸原さんはリサーチ、構成も含めてぜんぶひとりでこの本に注力しているのだから、なおさらスゴイなぁと敬服します。アップルコンピュータによるDTP時代の到来以前、写植文字を切り貼りしていたころは、そんな緻密な仕事をこなす巨匠アートディレクター諸氏が存在していました。軸原さんの熱意ある、ていねいな仕事に感心しつつ、今の時代にそうした熱き魂を感じる本づくりをしている人がいることに安堵の気持ちが湧き上がります。




1時間ほどでかたちにしたのは、好きな鳥のパターンをいくつか。家に余っていたケント紙や色紙、和紙を切っては折る。道具はハサミと糊だけ。無心になって手先に集中する工程。その濃密な時間が脳のある領域を刺激、活性化させるのか、完成後はやたら気持ちいい!  折紙細工のほとんどが本に載るHOW TO図案にしたがっていけば容易に完成します。ただ、なかには図案の解釈を思案し、想像力が求められるものもありました。また、切り方や折る角度、目など表情の付けかたしだいで、まるで別印象の出来上がりになります。基本はきちんと伝え、あとはそれぞれの自由な想像&創造性にゆだねる。そうした余地を残している本だと感じました。その余地をあえてもうけるセンスもまた賞賛したくなるのです。

SIGMA DP3 MERRILL