2016年4月28日木曜日

oketatsu



家を建てるとき、蛇口からスイッチまで、あらゆる部材を建築家の森博さんに相談しながら、とことことん選び抜き、その多くを自身で購入して、支給というスタイルで取り付けてもらいました。なかには、工房を訪ねて要望を細かくオーダーして入手したものも。風呂は予算も限られているのに木製品をと欲張りました。調べ尽くして、とてもリーズナブルな風呂桶を箱根の玄関口に立つ小田原の「桶辰」で注文できると知ったときは嬉しかったなぁ。屋外で寝かせて乾燥させた青森ヒバを用いた楕円型の風呂。湿気に強く、ほのかな芳香にリラックス効果がある木材。いつかは連泊したい岩手・花巻の湯治場でも温泉風呂の素材として使われているよう。伝統的な仕様より高さを抑え、和風な竹ではなく、素っ気ないステンレス板でタガを留めてもらいました。




この桶に最新のガスユニットをつなげ、追い焚きはもちろん、自動的に適度な量の水を張り、適温を保ちながら暖める機能を融合。木の香りを愉しみながら、現代的な利便性も享受できる風呂となりました。週末のジョギングに出かける前、桶の内部をきれいに洗い、フレッシュな湯を溜めるよう設定していきます。海辺と森を走ったあとの昼下がり、この風呂に浸かる至福といったら。フェルメールの絵画に登場するような高い位置の窓から射し込む光がグレーの壁をやわらかく照らし、微妙な陰影を描くのを眺め、憩います。風呂桶の横には茶室ほどの小さな空間があり、その向こうに裏庭の緑が控えている。この空間と庭を、バスタイムの極楽さをさらに高めるべく、いずれは手を加えていくつもり。苔を敷いて京都の坪庭風にするのもいいな。余地をどう活かしていくのか想像するだけでもワクワクします。

※追記:「桶辰」については、手仕事フォーラムの中村さんが詳細なレポートをされています。

SIGMA DP3 MERRILL