2016年6月5日日曜日

神保町の天丼


90年代に神保町の雑誌社で月刊誌の制作に打ち込んでいた日々懐かし。手書き原稿を携え写植屋を奔走途中でフィルムを出しにプロラボの行き帰り、深夜の作業に備え、よくお腹を満たしていたのが「いもや」の天丼。当時は猿楽町の路地裏に佇み、近くには富士工芸というモノクロ・ネガフィルム専用の現像があり、ベタ焼きという現像を待つ間、当時は500円の天丼を食べて憩っていたものでした。この旧「天丼いもや」、現「神田天丼家」の暖簾を20数年ぶりにくぐりました。生真面目な料理人、凛とした空気、白木の清らかなカウンター、ご飯粒を残さなければ中盛り・大盛りの追加料金が免じられるサービス、イカ、白魚、エビ、野菜、海苔で構成される天ぷらも不変。600円に値上げしたのと、少し天つゆが甘くなったように感じたこと以外、本質は何も変わっていない。出版仕事が劇的に様変わりしたこの街で、ずっと変わらないものに再会できたのが嬉しい。丼を平らげる10分間ほど手間をいとまなかった時代を述懐し、心温めていました。

SIGMA DP3 MERRILL