2016年7月13日水曜日

ぽえむの探究



店主の美意識をそこはかとなく感じる居心地のよい空間で、ていねいにドリップしたコーヒーを味わえて、友だちとのくつろいだ会話がほどよく聴こえてくる。そんな地域に愛される、気軽さと特別さを合わせ持つコーヒーハウスで憩うのが好きです。




三浦海岸駅前にある「ぽえむ」は趣味の幅が広く深い友人のTさんがマスターをつとめる。片道2時間半、葉山から三浦の南までスロージョギングして訪ねたくなるのは、Tさんが淹れる薫り高い一杯に心酔したいから、おしゃべりしたいから。




挽いたコーヒーの粉を入れる黄色い缶が佳い。日々使いこむあまり、指のかたちに窪んでいる。ドリップを前にして、気持ちがそれだけ入っているということなのでしょう。こんなプロの道具のありように惹かれます。ずいぶん以前にオリジナル缶として存在していたものだそうです。




たっぷり汗をかいた身体を潤すのは、いつものとおり「ジョッキコーヒー」。ぽえむの定番メニュー。水分をしっかり補給して、葉山に戻りました。




翌日の昼は、Tさんのお父さんがマスターである「ぽえむ日本橋店」へ。昼どきは日本IBMをはじめ近辺の会社員で賑わう。Tさんの店と同じく地域に馴染み深く愛されている。昔は武道をたしなんでいたというお父さん。80歳を過ぎて背筋をピンを伸ばして店に立たれている。凛としていながら、力の抜けた円熟の仕事ぶり。マスター業という仕事の内実はわからないし、知る必要もないのでしょうが、黙々としてやわらかく。この職には風雅な情趣がたちこめている。そんな仕事をされている人にぼくは羨望の目を向けます。




お父さんの淹れるコーヒーもまたおいしいなぁ。外の暑さを忘れる極楽な時間が流れていきます。





Tさんのお母さんがつくるハッシュドビーフがこれまた旨いんだ。キノコの食感、とろとろに溶けたトマトの甘み、牛肉の柔らかさが絶妙。ライスは麦飯と白飯から選べる。たっぷり供される福神漬けとラッキョウがよく合う。家庭的でほっとなごむ味わいがよいのです。家族でもてなす親密で温かな味と空気にも何度でも触れたいから、たびたび仕事場の築地から足を運ぶことになりそうです。

「ぽえむ」がお気に入りの理由をさらに深掘りしていきたいと思います。

LEICA M-E , MACRO ELMAR90mm/f4