このところ昼やすみは、ライカM-Eをたすき掛けして仕事場近くの築地六~七丁目をご飯食べついでに散歩。昭和初期に建てられた看板建築、瓦屋根の町家が点在する地域。東京大空襲をまぬがれ、生き残ってきた木造建築に惹かれて、カメラを向けています。
関東大震災では多くの木造家屋が地震による倒壊にくわえて、火災による焼失被害が大きかったため、木材の表面に延焼をやわらげる銅板を張った。その素材が半世紀以上を経て、緑青が浮くエイジングを表出していて、緑青好きの自分はたまらない風情を醸し出しています。
銅板の張りかたに凝った、市場関係の問屋らしき商家跡も。
タバコや飲料を売る商店と住居が一体の建物。こちらの亀甲パターンの銅板がいちばん好き。なぜ、自分は亀甲柄にこうまで心奪われるのだろう。
とんかつ「かつ平」のご主人に「もし街なみに興味ありましたら、そこの角を曲がったところに立つ格子戸の家も撮られてはいかがでしょう?」と教えていただいた一軒。ディテールまで完璧な美しさ。こんな町家に暮らしたら、どんな日々を過ごせるのだろう?と夢想するほど、瞬時で見惚れました。
まだこんな情緒ある家が残っていたこと感銘を受けながらも、「かつ平」ご主人が口にした「危機遺産」という言葉が耳に残り、ネットでリサーチ。すると、ニューヨークを拠点にする歴史的建築物などの保存に取り組む米国の非営利団体「ワールド・モニュメント財団」(WMF)が今年発表した「危機遺産」に築地の木造建築群も含まれていることがわかりました。
開発で歴史的建造物ひいては風情豊かな街なみが壊されつつある現状を知らしめている団体ですが、東京で挙げられた2箇所のうち、ひとつがまさに仕事場周辺のエリアだとわかって驚きました。自分には保存に関わる力はないのですが、こうして写真に記録していくことも、いずれは何かの役に立つかもしれません。なにかと飽きっぽい自分ですが、築地だけ、昼の小一時間にまわれる程度の範囲でなら、日常的な建築スナップを継続できるでしょう。おもに趣味の一環としてblog用に撮っている私的で酔狂な散歩写真にひとつの意義を見いだせたように思い、にわかに気力が高まってきました。
LEICA M-E , ELMARIT28mm / f2.8 4th generation
MACRO ELMAR90mm / f4