2017年1月30日月曜日

美しい日曜日 vol.4


日曜日を待ち通しくさせる鎌倉「カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュ」の堀内隆志マスターと、このカフェでフランス語講座をひらき、フランス文化への多方面の見識が深い編集者・ライター・翻訳者の小柳 帝さん。2人がおすすめの音楽を紹介するイヴェント「ビューティフルサンデー」。濃密な内容。高揚感で休日の朝を美しく、華やかに彩ってくれます。


冒頭は最近気に入っているCDを挙げる。ヘニング・シュミット黒木千波留などピアニストのアルバムが好きという堀内さんが勧めたのはスワヴェク・ヤスクウケの『夢のなかへ』。前作「Sea」もよかったけれど、子供を寝落ちさせるためにつくったというこのアルバムもいい。小さな音で流すと心地よいそうです。おだやかな場の空気が目に浮かぶよう。

続いて、最近観た映画にお題目は移り、小柳さんは神保町・岩波ホールで上映中の『皆さま、ごきげんよう』を推薦。ジャック・タチ「ぼくの伯父さん」のイラストを描いたピエール・エテックスが出演していること。その彼が昨年亡くなったこと。オタール・イオセリアーニ監督がジャック・タチ好きで、映画に思慕の想いが表れていること。これらの要素をからめ、あとに控えるメインテーマへつなげていく構成。ぜんたいの流れをつかみながら、ひとつひとつのパートの魅力を存分に、即興的に伝える。小柳さんの重層的思考と話術に引き込まれます。名プレイヤーのジャズを聴いているよう。


前振りとして、ジャック・ドゥミ監督のミュージカル映画『ロシュフォールの恋人たち』の世界観を語り、互いに強く惹かれていることに触れたあと、話題はミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』。日本では2月末の公開。『セッション』を監督した若きデイミアン・チャゼル最新作。「ロシュフォール感がよく出ている!」という小柳さんは、今ならまだ入手可というアナログレコードの一曲目を流す。躍動感いっぱいのボーカルと音楽。「やばいっすね!」と堀内さんもたちまち魅了されている。まずはサントラ盤を買わないと!と鼻息荒く、熱い亥視線は、CD版よりも洒落たジャケットのアナログ盤へ。スタンダードなミュージカルをなぞらず、あえて商業的リスクの高い完全オリジナルのミュージカルで挑んだ映画。試写で昨年観た小柳さんは、翌日にまた観たくなったとか。公開が待ち遠しい!

小柳さんレコメンドで、観なくては!と感じたものはほかにも。ニューヨークを舞台にした瀟洒な恋愛映画『マギーズ・プラン』。出演者、ストーリー概略を解説したあと、着目点にふれる。小柳さんがマークしている美術監督アレクサンドラ・シャラーの仕事ぶりについて。彼女のことはBRUTUS CASAのWEB記事で、インタビューをもとに小柳さんが詳しく紹介している。彼女が設定するインテリアや出演者の衣装が素晴らしいと賞賛。センスが秀逸という、そのアートワークを劇場で確かめたくなりました。


そして、いよいよ本題へ。「わたしの好きなバート・バカラック」。数々のロマンティックなヒット曲のカバーを、自分なりの嗜好でセレクト。このパートは1994年4月にディモンシュをオープンした当時、よく店でバカラックを聴いていたという堀内さんの想いがあふれんばかりに、胸に迫ってきました。当時、雑誌「BRUTUS」でバカラック特集を組んだ編集者・岡本仁さんがよく店に来てくれていたことも、影響しているのかもしれないと回想。店のグッズなどのデザインを依頼しているアートディレクター小野英作さんがジャケットを手がけた希少なアナログ盤を披露しつつ、好きなカバーCDを紹介。

ルーマーの『This girls in love』はオリジナルに忠実なボーカルがいい。
iTunesではボーナストラックが付くアストラッド・ジルベルトの『GILBERTO with Turrentine』などなど。

小柳さんはハワイのリチャード・ナット―が情感豊かなギター弾き語りの一曲『Go to be somebody』や、ブライアン・ウイルソンの『Walk on By』など沁みるアレンジをチョイス。

「みんなが好きなバカラックだけど、自分な好きなバカラック集をplay listにしてつくるのもいいですね」という言葉で締められる。


この朝に出合えた音楽がぼくの人生をハッピーにしてくれるような、そんな感慨を胸に、輝かしい日曜日の午後を過ごしました。

小柳さん、堀内さん、素敵な時間をありがとうございました。
つぎの開催を心待ちにしています。

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