2017年4月26日水曜日

鉄骨橋をめぐる散歩


週にいちど、体力温存のため佃島に泊まるときは、築地から鉄砲洲、湊町、新川、八丁堀など、江戸の運河が残る水辺ルートを歩いて帰ります。人の少ない路地から路地へ。本能の赴くまま道を選ぶと、おのずと決まったコースに。新川の南高橋は憧れの亀島川に架かる橋。細長い部材を両端で三角形につないだ構造(トラス構造)を繰り返して桁を作った橋。都内の鉄鋼トラス橋のなかで、道路橋としては最古とか。武骨な造形が格好よい。無粋な構造物だらけの東京だけど、実家近くには機能美に満ちたものが生き残っている。


亀島川のボートに羨望の眼を向け、渡る。近々に、この川からシーカヤックを漕ぎ出す予定。その夢をかなえてくれる人たちと打ち合わせしなくては。


新川と日本橋箱崎を結び、日本橋川に架かる豊海橋は、さらに美しい。梯子を横倒しにしたような外観。ベルギー人が考案した橋梁スタイルで、日本初のフィーレンディール橋。隣の永代橋との景観の調和を考慮した造形なのだとか。かつては街づくりに美の感覚をもって臨んでいた。そんな時代が無秩序都市と化した東京にもあったんだなぁ。


永代橋のたもとには、川を渡る風を浴びながら、テラスでクラフトビールを味わえる『Mile Post Cafe』がある。碧くきらめく水面を見つめ、心も体も酔う。


都内の水辺バーでこれほどの恵まれた環境はたぶんない。唯一無二の稀少空間。


夢心地で隅田川テラスを歩き、中央大橋から相生橋へと移動し、島に還る。南高橋、永代橋、相生橋も、石川島造船所石川島播磨重工業/IHI)が手がけたトラス橋。鉄骨の接合には、IHIの仕事を請け負っていたリベット職人の祖父が携わっていたかもしれない。構造剥き出しの工業製品に惹かれる嗜好は、たぶん祖父のDNAと繋がっている。いろいろな想いに浸りながら、永井荷風よろしく、隅田川そばの夜道をブラブラとさまよいます。

LEICA M-E , SUMMILUX50mm ASPH. f/1.4