2017年6月1日木曜日

広角散歩


散歩に携えるのは標準レンズ(50mm)。好きなものをフォーカスするには望遠レンズ(90mm)が基本の選択。基本を尊び、ずっと同じ視野でものごとを観ていると、外界へのイメージが固まってしまう気がします。それで、たまに広角レンズに交換してみる。


視野がたちまち広がり、その幅と奥行きが新鮮に感じられ、心地よい。家のまわりや、こみち沿いの植物は、フレッシュな時季を過ぎ、梅雨に向けて繁茂の体制。勢いを増す生命力を1990年代製のちょっと古いレンズはライカM-EのCCDセンサー(コダック製CCDセンサーの剥離後に交換してもらったもの)との組み合わせにおいて、油絵のように、濃厚な質感と色彩で描く。


夕暮れや曇天時の、照度が落ちた光の状況で、アンダー気味の露出でスナップすると、このレンズの真骨頂ともいえる描写に唸らされます。


朝露や通り雨に濡れる葉にレンズを向ければ、潤いの「気」まで伝えてくれる。


ライカレンズは光学技術が進化した最新製品が最高の性能を数値的には示すけれど、製造年代それぞれに「味わい」という名の個性的な描写が存在する。プレミアム価格に高騰している特別なレンズだけじゃない。普及タイプのレンズも独創的な味がある。このエルマリート第4世代は青天の昼間の撮影はやや苦手なシチュエーションかもしれない。そんな光のなかでの描写はじつに素っ気なく普通だから。逆に、そうしたレンズの不得意をわきまえて、ひそんでいる味を引きだすことができたとき、ぼくは深い深い悦びに浸ります。

LEICA M-E , ELMARIT28mm 4TH GENERATION , f/2.8