2017年6月2日金曜日

ELMARIT再評価


僕が唯一所有するライカ純正広角レンズはエルマリート28mm第4世代球面タイプ。20数年前にライカのフィルムカメラM6と一緒に銀座レモン社で現況では考えられない、お買い得な並行輸入価格で求めたもの。いったんは建築家の友人のもとへお嫁に出しましたが、ライカM-Eを購入後、広角レンズが仕事で必要となり、出戻りしてもらいました。


南国や海辺など眩い陽光の下では、このレンズの佳さは活かされない。開放f2.8からピントの合う幅があり、瞬時のチャンスは逃さない。けれど、その写りはおおむね凡庸で、生真面目だけどつまらない。なおかつ外観もいたって普通なので、ライカレンズにしてはお手頃な中古価格で入手できます。


エルマリートの佳さは、室内や朝夕のやや暗い屋外で引きだされます。陰影のコントラストは玄人好みの穏やかなトーン、控えめな色表現がこの空間にはふさわしい。華やかさ、透明感はありませんが、しみじみと渋い描写。だから、目が疲れず、なごみます。最新デジタルライカで撮ると、もっと彩度が高まり、モダンな色味になるかもしれない(前日の投稿写真を参照)。


無名の職人。技術は高いけれど、世には存在があまり知られていない。そんな本当の意味での良質さを製造後20年以上経過しても、しっかり保持しています。


これは2009年、ライカM8というデジタルカメラに装着し、松本民藝家具のアトリエを写したもの。M8の構造上、35mmと画角が狭まりますが、コダック製CCDセンサーの黄緑かぶりの色合いと、フィルム時代に創られたエルマリートの光学性能がマッチ。その場でプレビュー画像を観たとき、劇的さはないものの、空間感をきっちり描くさまに心酔したのを覚えています。

LEICA M8 , ELMARIT28mm 4TH EDITION  f/2.8