2017年8月21日月曜日

インテリアの学び


尾山台の「手しごと」は民藝を知る、親しむ道案内となる存在。星耕硝子の伊藤さんが語る吹き硝子作りの秘密に耳を傾けながら、同時に店の細部にも眼をこらしていました。店内に置かれた美しい工藝品の数々。自分の暮らす空間に招いたときの使いかた、飾りかたが想像しやすいようディスプレイされています。焼き物の花瓶のみならず、硝子のピッチャーにも花を活けてある。本来の用途とは異なりますが、こんな活用法もあると教えてくれるのです。その花も、店が立地する世田谷らしくモダンなテイスト。ここは鎌倉「もやい工藝」の姉妹店となりますが、鎌倉で飾る花とは雰囲気が違います。その選択に単なるスタッフの嗜好の違いだけでなく、お客さんのタイプ、店の方向性が伺えます。


自分の選び、扱う工藝品をいかに美しく見せるか心を砕き、久野恵一さん自ら店舗兼住宅の設計に深く関与した「もやい工藝」の空間と異なり、「手しごと」はもともと別の用途であった空間を活用しています。久野恵一さんの完璧な美意識を通常の住空間でなぞるのはとても難しいことですが、「手しごと」は扱う物も含めて空間も、自分にも手軽に真似できそうな近しい感じがあるように思います。たとえば窓辺の棚。硝子製品は自然光で透過して眺めるともっとも美しく輝く。そうわかっていても窓辺に硝子製品を並べるのは、家を建てる際に設えた特注の棚でもない限り実現は簡単ではないように諦めてしまいがち。「手しごと」の窓辺にはDIYで作ったように見える簡素な棚がはめ込まれ、そこに伊藤さんの硝子が魅力的に展示してありました。これなら自分の家でもできるかもしれない。そんな勇気をもらえるディスプレイ手法なのです。


店の中央に据えられたテーブルにも惹かれました。林檎かワインの木箱を脚がわりにして古い板を支えている。その気取らぬ佇まいが古材の味ともども魅力的なのです。これにお気に入りの布でカバーすれば、また別の印象も愉しめるでしょう。高価な一生物のテーブルを買うのもよいですが、こうして手軽に味わい深いテーブルに仕立てるのも素敵です。暮らしは、住空間は工夫しだいで豊かに彩ることができる。若い人にはたくさんのインスピレーションを与えてくれる店だと思います。

LEICA M-E , SUMMILUX50mm ASPH. f/1.4 
ELMARIT28mm 4th EDITION f/2.8