元・葉山しおさい博物館館長で世界的なタカラガイ・コレクターの池田 等さん、コレクター仲間の淤見慶宏さん、写真家・広田行正さんと共に1年かけて完成させた『タカラガイ・ブック』。惜しくも初版を出版した東京書籍では絶版扱いとなり、古書価格が上昇。一時は3万円近くで売りに出ていたという。こうした専門図鑑は初版の部数が少ないうえに初版で絶版になるケースが多い。さらに、その初版本を所有するコレクターが手放すことがまずないので、価値が急高騰していくのが常なのだ。
そして先日、復刊の声に後押しされて、池田さんの働きかけで成山堂書店から発刊されることになった。改訂版では池田さんがタカラガイに合うと望んでいた光沢あるコート紙に変更。椎名麻美さんのアートディレクションを活用しているものの、写真に添える矢印や見出し文字の強調色は変更。オリジナルの品格・洗練、細部とは大きな違いがある。僕はこの改訂版実現に関わっていないが、律儀で誠実な池田さんが本を贈呈してくれた。
久しぶりに池田さんと顔を合わせて復刊を悦び、脳が潤う多様で奥行きのある話題で盛り上がった。池田さんと話しているとものごとの真理に気づかされ、曖昧だった像がくっきり浮かび上がる。想像が確信に変わり、気持ちが昂り、元気になれるのだ。すごい人だ。
館長職を退かれてから、たくさんの貝図鑑の監修、著作に携わり多忙な池田さん。価値観、知識、経験が多くの編集者から頼りにされている。自身の欲求から生命を奪った貝たちを自分だけのものとして囲っていたら、まさにDead Stockと化し、所有者は決まって悲惨な最後を迎えるという。貝の美しさや魅力を広く伝えることが供養になると池田さんは語る。そんな風に筋を通すコレクターの生き様にたまらなく痺れる。
改訂版のプロフィールでは池田さんが構想中の私設博物館を「貝千種・池田屋」と名付けている。この漢字を「かいせんしゅ」ではなく「かいちぐさ」と読めた人は相当な貝マニアだ。それは知る人ぞ知る希少本(上の写真)の読み仮名である。集めた貝を多色刷りの版画で記録した貝図鑑「貝千種」( 芸艸堂 )。3冊セットで現在の金額は30万円ほど。制作者は国や研究機関に頼らず、私財を投じて貝の探求・収集に邁進した平瀬 與一郎さん。没後に活動の評価が高まった人物だ。池田さんは平瀬さんに敬意を払い、コレクションをフルに活かそうとしている。今が人生でいちばん充足していると顔が輝く池田さんと知見を得た巡り合わせを必然ととらえるならば、僕にも何かなすべき役割が残されているのかもしれない。
LEICA M-E , SUMMILUX50mm ASPH. f/1.4
改訂版のプロフィールでは池田さんが構想中の私設博物館を「貝千種・池田屋」と名付けている。この漢字を「かいせんしゅ」ではなく「かいちぐさ」と読めた人は相当な貝マニアだ。それは知る人ぞ知る希少本(上の写真)の読み仮名である。集めた貝を多色刷りの版画で記録した貝図鑑「貝千種」( 芸艸堂 )。3冊セットで現在の金額は30万円ほど。制作者は国や研究機関に頼らず、私財を投じて貝の探求・収集に邁進した平瀬 與一郎さん。没後に活動の評価が高まった人物だ。池田さんは平瀬さんに敬意を払い、コレクションをフルに活かそうとしている。今が人生でいちばん充足していると顔が輝く池田さんと知見を得た巡り合わせを必然ととらえるならば、僕にも何かなすべき役割が残されているのかもしれない。
LEICA M-E , SUMMILUX50mm ASPH. f/1.4

