2018年12月31日月曜日

BLACK



11月下旬、東銀座の森岡書店で偶然、1冊の本に出合った。著者は写真家・上田義彦さんのアシスタントをしていた写真家・白石和弘さん。2019年1月26日に出版予定『また、あうものたち』(アカツキプレス/オークラ出版)のお披露目展示で、自身が収集した古物を記録した写真集。師匠の静物写真に通じる、黒バックに佇む静謐な物の美に魅了された。

編集者・柴田隆寛さんとのトークイベントでは、古物はフィルムを使って家のなかで、自然光のみで撮影。現像も自身でおこなったと語った。展示されていたオリジナルプリントが秀逸だったから、自分の眼に近い感覚で写るのが佳くてフィルム撮影を選択したという話がとても心に響いた。

ほんとうはこのイベント時に本を販売するつもりで、印刷所に出張校正して、印刷立会いまでしたのに、4色の色掛け合わせが納得いく仕上がりにならず、断腸の思いで販売を延期した、妥協しない姿勢と追求心にも感服した。

そんな白石さんの手法とセンスに感化されて、2019年1月11日〜20日、葉山しおさい博物館で催される「葉山一色海岸アート展」に展示する写真は、フィルムで撮り、大きくプリントすることにした。



真冬の葉山一色海岸によく打ち上がるハツユキダカラというタカラガイの貝殻を黒い紙をバックに、自然光で撮影。ハッセルブラッドに純正クローズアップレンズを装着、フィルムはべルヴィアのブローニーのポジフィルムを選んだ。

その正方形フォーマットのポジフィルムを銀座のプロラボがノートリミングで高精細スキャンして、徳島のawagamiファクトリーがA0サイズの楮和紙にプリント。ポジならではの光沢はマットな用紙で和らげられつつ品よく残り、貝殻の質感をリアルに表現できた。太古から人類が魅せられてきた造形と艶にフォーカスするプリントに一発で仕上がったと思う。腕のよい職人に頼み、手間を惜しまず取り組んでよかった。



このプリントはパシフィック・ファニチャー・サービスの『ピクチャーフレームL』で天地だけ留めて、あえてラフに展示することにした。締めるのも、緩めるのも容易な、真鍮の英国製マイナスネジでオーク材を留める仕様は気が利いているし、そのネジを締めるのに、身近にあったレザーマンのツールが役立ったスムーズさも、とても心地よかった。格好よくて、使い勝手が絶妙だから、このフレームに生涯愛着を寄せられるだろう。無垢材に拭き漆状のオイルを塗ったフレームが醸し出すアメリカンな雰囲気を含めて、和紙の風合いとフィルム写真特有の眼に優しくも精緻な描写を直に感得していただけたらと願っている。

さ

なお、写真のそばには撮影したタカラガイの実物も面側の文様が見えるようにディスプレイするつもり。貝殻の特徴を眼に焼き付けて、ビーチに向かってもらえたら嬉しい。

僕は1月12日、13日の午前中、会場に立ちます。PFSのピクチャーフレームは1月中旬に再販予定だとか。

LEICA M-E , 7artisans 28mm F1.4
SIGMA DP3 MERRILL