築地の仕事場前の道をまっすぐ歩いて20分ほど。台風の余波である大雨のなか、日本橋小網町へ。マンハッタンにあるような荘厳な東京証券取引所のそば、神田川のほとりに立つ桃乳舎は、昭和2年竣工の看板建築。元ミルクホール、牛乳販売所だった建物で財布に優しく、ボリュームある洋食と昭和レトロな空間を味わうことができます。古い石造りの建築物は、光の強い日に深い陰影とともに鑑賞すると劇的に感じられますが、雨に濡れる風情もまたしっとりとしていてよいものです。
スパゲティからカレーライス、ハヤシライスは400円台。ぼくはご飯を大盛りにしてもらったポークカツレツ630円をオーダー。証券会社が集まる一角。訪問時は、白いシャツにネクタイを締めた生真面目そうな男性会社員で席が埋まっていました。その多くが500円の「ランチ」を頼み、皿を構成する料理のひとつスパゲティを大盛りに指定。次回、訪ねたときはぼくも真似してみよう。
やや傾いた土間に歴史を感じる店内。懐かしい気分で満腹になるまえに胸がいっぱいになります。文化遺産ともいえる建物の内部から、その風情を体感できる貴重な場所です。気さくな店員さんにも心なごみます。ポークカツレツの注文を受け、厨房には「とんかつ〜」と伝えるのもまたいい感じ。客がそのおだやかな空気に、心休めているのがみてとれる。日本橋のオアシスですね。また、自分のお気に入りマップに新たな一軒が加わりました。
LEICA M-E , ELMARIT28mm 4TH GENERATION
追伸: 時のとまった空間をスナップするのに、エルマリートというちょっと古い球面レンズはふさわしい。グレーの空と蛍光灯に照らされる屋内外の空気感をリアルにすくいとっていて、ゾクゾクします。