使い馴染んだものには味わいが増す一方、慣れ親しむあまり、空気のように身近な存在、新鮮味を感じにくい関係になっていきがちです。自分の場合、90年代なかばに入手したレッドウイングのワーキングブーツ、アイリッシュセッター(定番NO.875)がそう。半円の犬タグで、靴の修理職人によれば、このころの875は革質、色、形、すべてのバランスが最高なのだとか。履きこむうちに、こわばっていた革はくるぶしやつま先を柔らかく包み、まことに具合がいい。そこそこ長い距離も快適に歩きとおせるから、葉山〜築地の通勤靴として活躍中。そんなマイスタンダードな日用品との関係を馴れ合いのままにせず、ふとリフレッシュしたくなりました。
シューレスがやや傷んでいたこともあって、気分を改めるべくシューレースを交換することに。雑誌「popeye」で紹介されていたVINCENT SHOELACEにオーダー。京都出身の二人組が1950年代、北米でつくられていた旧きよきシューレースの味わいを上質な素材で蘇らせた製品だそうです。
選んだのはSANDYの49インチ。ずっと品切れ状態で、毎日HPをチェックしては再販売を愉しみに待っていました。明るい黄色の「Blond」ベースに赤紫が挿し色となるカラー。赤みがかった875の茶革にベストマッチでかなり嬉しい。
やつれ気味だったシューズが若返ったように見えます。きれいな洒落色で彩られ、活き活きとしたシューズの表情に惚れ直す。これからいっそうと付き合いを深めていけそうです。ぼくもウキウキと心が弾み、早速、横浜の街を10km近く散歩してしまいました。
SIGMA DP3 MERRILL