葉山⇔鎌倉のスロージョギング。より快適な道のりを求め、国道134号線・渚橋交差点から逗子海岸に降り、波打ち際を進みます。国道に平行して小坪方面へと続く裏道があるのですが、その狭い抜け道を駆け抜ける車が多いので、なるべく回避したいと考えてのルートです。昼過ぎまで強い雨が降っていたので、雨上がり直後のビーチはまだ朝からの静けさを保っています。たまたま貝殻がたくさん打ち上がる潮汐でしたので、かねてから興味のあった貝を拾い集めることにしました。
水牛の角に似て、「牙」の英名をもつツノガイ(Tusk Shell)です。葉山や逗子のビーチで集めた貝を素材に、オブジェを制作している「かいのどうぶつえん」主宰、角田さんから以前、このツノガイは逗子海岸でしか拾うことができないと聞いたことがあります。角田さんはこの貝をゾウをはじめ、動物の角や牙を表現するのに多用しています。ぼくの暮らす地域では見かけない貝ですから、貝殻が集まる一帯に目を凝らして、先端が尖ったシャープな造形が次々に見えてくると興奮。とくによいかたちのものを選ぶゆとりがあるほどたくさん打ち上がっていました。サザエの殻が長い年月をかけて摩耗して、最後に残った芯部分もそこかしこに。ツノガイと合わせて逗子海岸の特徴ともいえる打ち上げ物だと考えられます。
逗子海岸は打ち上げ物を拾い集めるビーチコーマーが多いところですが、雨が長引いたおかげでライバルを出し抜いて目的の「お宝」を入手できました。夢中になってツノガイに手を伸ばしていたら、犬を連れた老女が近づいてきて、サクラガイの入った緑色のネットを差し出してくれました。「私はこれをたくさん持っているから。(収集物を入れたまま)そのまま洗えて便利よ」とひとこと。ローカル・ビーチコーマーのやさしさ、心のゆとりに感激。逗子市新宿。いいところだなぁ。
壊れないようたいせつに持ち帰って、ヴィンテージグラスの蓋に入れ、ダイニングテーブルの上に置いて鑑賞。かねてからの願いがかない悦に入っていると、妻が「動物の牙みたいで気色悪い」とぴしゃり。とほほ・・・。食欲をそがれるからと、展示場所を移動。
庭に落ちていた芭蕉の葉に載せ、部屋の隅でじっくりと鑑賞しました。白い打ち上げ物は黒い紙や布を背景にすると見栄えがよくなるのですが、濃緑の葉も案外、よさげ。グリーンを選んだのは老女にもらった網の色が意識に残存していたからかもしれません。運しだいで良いものに出合えるビーチコーミング。その趣味を愛でる者は縁や偶然を尊びたくなるのです。
LEICA M-E , SUMMILUX50mm ASPH.
SIGMA DP3 MERRILL